『Live in Tokyo 1988 Milva&Astor Piazzora』レビュー

世界には、様々な文化がある。私は、学生時代、手当たり次第に本を読み、音楽を聴きまくっていた。
高校生の頃、イタリア文学者の須賀敦子の本と出会い感銘を受け、独学でイタリア語を勉強したりもした。もうほとんど忘れてしまったが。
家にはカンツォーネのレコードやCDがあり、それらを聴いていた。イタリアの音楽は、映画音楽のように優美である。
イタリア三大女性歌手といえば、ミーナ・マッツィーニ、オルネラ・ヴァノーニ、ミルバだろう。
今回は、ミルバについて書きたい。

ミルバがアルゼンチンタンゴの革命児アストル・ピアソラと共作し、1988年に日本で行ったステージが収められたDVDが近年発売された。
私はアストル・ピアソラにも偉大なる音楽家としてリスペクトの念を贈りたい。彼はタンゴを革新的に変えた。もともとは、アルゼンチンに移民してきた者たちが作ったのがタンゴである。それは、酒場などで淫らな踊りと評された。
しかし、タンゴは今や芸術である。官能性はそのままに、人々の心の中心に居続けるタンゴ。ブエノスアイレスの街の至るところで繰り広げられる、踊りとバンドネオンの響き。
そんなタンゴに魅せられて、筆者も二十二歳のとき、半年間だけタンゴを習ったことがある。しかも、自分の住んでいる地元に教室があった。本場で修行した日本人の先生が教えてくれるのだ。カルチャー教室のような雰囲気ではなく、スタジオであった。現地のミロンガ(アルゼンチンタンゴを踊る場所)をそっくりそのまま作ったみたいだった。
あの時、チャコットで買ったタンゴ用のシューズがいまだに処分できない。高かった。靴底は、総ベルベット張りだ。スムーズに足が滑れるように。
私はタンゴを習得することが出来なかった。とても難しく、今でも出来るとしたら、基本のステップくらいである。しかし、タンゴは女性が踊れなくても、男性のリードでなんとかなるものだとも感じた。
アル・パチーノが出演した映画『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』で盲目のパチーノが若い女性とタンゴを踊る場面がある。とても良い映画だった。
話が脱線してしまったが、ミルバとピアソラの『ライブ・イン・トーキョー』である。ミルバは圧巻の表現をステージで見せつけた。う~ん、素晴らしい!
ずっと聴きたかった、探していた、『もしもまだ』が収録されていて、この度肝を抜く説得力に魅了されている。驚くべき赤毛の女。私は一時期彼女に憧れていた、あの成熟に。
タンゴ界の異端児であるピアソラについては、もう説明する必要もなく、素晴らしい。
多くの人に観て触れて欲しい作品。おすすめ!

ミルバは、2021年に81歳でお亡くなりになりました。深くご冥福をお祈りいたします。
また、ミルバが亡くなった2021年はピアソラの生誕100年の記念でもありました。
これらの音楽は死ぬことがないでしょう、ずっと生き続けます。

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