『ギター弾きの恋』レビュー

危うく、すっぽり騙されかけるところだった。
というのも、映画『ギター弾きの恋』(2000年アメリカ)を観て、エメット・レイなる天才ギタリストが実在すると思ってしまったからだ。
この映画を監督・脚本したのは、ジャズ好きでも有名なウディ・アレン。しかも、御本人が出演してエメットの活躍などを語り、ドキュメンタリータッチで構成しているものだから本当に騙されかけたよ。
こういうところが本当に洒落ているので好きなのだが、音楽好きはもちろん、軽く観れるコメディとして楽しめる作品をお探しのかたにはおすすめの作品。

時は1930年代のアメリカ。ジャンゴ・ラインハルトを崇拝しているギター弾きのエメットが織りなす自堕落でロマンティックな物語。
ジャンゴは世界一のギター弾きであるが、そんなジャンゴに憧れてギターを弾くようになったエメット。自らを天才と自負し、「世界で二番目にギターが上手い奏者」と豪語する。
女にも金にもだらしない彼は、レストランで演奏をするが、演奏は超一流でもやることなすかとがとんでもなくおとぼけ。
自分で企画した手製の月に乗ってギターを弾くという演出も、大コケで大失敗。そして、人の家に行っては物を盗むという癖さえある。
それでも、独特の愛嬌ゆえか憎めないキャラクターである。

そんな彼に運命(?)の女性が現れる。友人と繰り出した海辺の町でナンパを試みるエメット。
ついに見つけた二人組の女性のどちらを選ぶかを賭けで負けて、しかたなく声をかけた女性。それがハッティだった。
ハッティは小柄で、どこか幼児のようなあどけなさを持つ女性だが、障がいのため口が聞けない。
エメットは、最初は「ハズレくじ」を引いた!と苛立っていたが、次第に彼女の純粋無垢な存在を愛しく思うようになる。
二人はしばらく生活を共にするが、エメットは何故か突然彼女のもとから去ってしまう。
そして、偶然知り合った上流階級出身の作家ブランチと電撃結婚する。
しかし、そのブランチとの生活も波乱に溢れていて…。

ハッティを演じたサマンサ・モートンが本当に愛らしい!素朴で、可憐で、優しげで、守ってあげたくなるような女性を好演している。
対照的なのが、ユマ・サーマンが演じるブランチだが、こちらはやはりどこか気位の高そうな美女で魅力がある。
なかなか、ままならない生活を送っているエメットが最終的にどうなったかって?
そこは語らないでおくが、とても切ないとだけ言っておこう。
この映画には、笑いがよく似合う。しかし、笑いの裏には涙だってある。良質なコメディはいつだってそういうものだ。
最後に、何かを見つけるってことは、とても幸運なことだ。それが、ギターであれ、恋であれ、絵を描くことであれ…それを見つけられるって人は少ないように思うから。
才能の有無にかかわらず、何を見つけるのかってことが案外大切なことなのかもしれない。そんなことも思った。

 

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