『春のめざめ ドキュメンタリー』レビュー

久々に好きだったCDを聴きたいと思い、iTunesをひらいた。
アメリカのシンガーソングライター、ダンカン・シークのデビューアルバムを聴きたかったのだが、ひらいてみてビックリ。
デビューアルバムではない(こちらは勿論名盤なのだが)。彼の名がブロードウェイミュージカル『春のめざめ』にクレジットされているではないか。
私はそのサウンドトラックを聴いた。そして、またビックリ。歌っているのが、ドラマ『glee』のレイチェル役リア・ミシェルだったからだ。
私はミュージカルに興味があり、『春のめざめ』のことは知っていた。それも、なんとなくの内容だけ。
このミュージカルが相当先鋭的で前例のないものだということは噂に知っていた。だから、ずっと気になっていた。
今回、このドキュメンタリーを観て、初めてその世界に触れたのだが、すごい!の一言だ。
残念ながら、ミュージカルシーンは復活コンサートのハイライトでしか見れなかったが、是非とも丸々物語を堪能してみたいと思わせる作品だ。

まず、この物語の原案となった戯曲は内容が内容なだけに上演禁止の措置までとられた。
思春期の少年・少女がもつ性衝動、同性愛、堕胎、性的虐待、自慰行為などについて赤裸々に描かれているからだ。
舞台は19世紀末のドイツだが、2006年にブロードウェイで公演されたミュージカルではこういった若者たちの心の叫びや思いを現代流にロックになぞらえて展開されている。
その音楽を担当したのが、ダンカン・シークというわけだ。う~ん、これは音楽を聴いただけでもすごくいいと思ってしまった!
ダンカンを起用したプロデューサーも流石だが、ダンカンの才能にも唸ってしまう。一聴の価値あり。
そして、このミュージカルで重要な登場人物を演じたリア・ミシェル。彼女の歌声には、いつも参ってしまう。勿論グレートという意味でだ。
こんな難しい題材を、よくミュージカルに出来たものだなと感心してしまう。ある意味タブーに切り込んだ、その心意気が素晴らしい。

今では、性の多様化がすすみ、同性愛も性同一性もめずらしいものではない。
また、十代で性的なことを口にしたり、実際性体験している人も多いだろう(これは今に限ったことではないが)。
性に関するコンテンツは様々なところに溢れかえっている。情報があり過ぎると言っていいくらいに。
ミュージカルでは、抑圧された性への欲望も描かれていると思うが、一方で性的な虐待といった深刻な問題も盛り込まれている。
ああ、私は本当にこの作品が観たい。出来ればオリジナルキャストで…。ブロードウェイで観てみたいものだ!

ちなみに、私が十代の頃(中学から高校まで)カトリックの女子校に通っていたが、性教育というか性に関しての話題はオープンだった。
図書室には、発禁では?と思うような本が堂々並んでいたし、教師も男女問わない生理のことを自然に口にしていた。少なくとも恥ずべきことではないように思われた。隠されていなかった。
そう、性とは自然の一部分であり、それこそが今私が存在する証なのだから。私たちは、とても罪深い生き物なのかもしれないが、性とは命そのものだ。
最後に。本当にこの作品が観たい!ダンカン・シークに、リア・ミシェル、それだけでもすごいのに、こんな革新的な題材と演出のミュージカルは、きっと最高にちがいないからだ。

 

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