この世には疑う余地のない才能というのが存在する。
ホイットニー・ヒューストン。彼女はまさしく、その一人であろう。
昨年公開されたホイットニーの伝記映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』を遅れて観た。
天は二物を彼女に与えた。素晴らしい才能のみならず、富と名声、美貌まで。
私は、遅れてきたホイットニー世代である。彼女の映画『ボディーガード』が流行っていたとき、私は小学生であった。
彼女の歌を本格的に聴き出したのは19歳ごろから。ジョニ・ミッチェルやローラ・ニーロを聴きながら、同時にホイットニーやチャカ・カーンなどに傾倒していた。
音楽的には相反するかもしれないが、女性の持つパワーを感じていたのだ。こと、ホイットニーに関しては、あの美声と音域の広さ、声量にやられた。
そして、歌というものがこれほど自分の心を鼓舞させ震わせるとは思っていなかった。
本作は、ホイットニーが成功の陰で抱えていた問題(家庭不和や薬物など)にも触れ、いろいろと考えさせられる部分があった。
数年前に彼女のドキュメンタリー映画を観ていたので知ってはいたが、華やかな舞台の裏で彼女が抱えていた孤独や闇の深さは計り知れないものがあっただろう。
彼女のその心を見抜いたボビー・ブラウンが救世主になるかといえば、彼は問題だらけのバッドボーイで、その結婚にもやはり無理があったかと思う。
私は彼女の歌声に勇気をもらい、救われた者の一人だが、彼女の晩年を思うと非常に心苦しい。
大きな成功の代償としては、あまりに辛すぎる最期ではなかったか。それもドラッグを断ち切れなかった彼女の心の弱さが引き起こした顛末なのか。
この作品では、ホイットニーの音楽を思う存分楽しむことができるので、そこのところは圧巻であった。
今でも、ホイットニーの音楽はよく聴いている。
やはり、あのハイトーンヴォイスには抗いがたい魅力を感じる。
この記事を書きながら、ボロボロになった彼女のベストアルバム二枚組を引っぱり出してきた(とてもよく聴いていたので歌詞カードまでボロボロなのである)。
私は『オールウェイズ・ラヴ・ユー』も好きだが、『すべてをあなたに』が結構好きだ。こんなにエレガントに不倫をうたった歌ってあるかしら…(不倫の歌だから好きなのではありません!あしからず)。
他にもホイットニーは数々のヒット曲を出しているから、彼女の歌は永遠に聴き継がれ歌い継がれていくのだろう。
運命に翻弄されながらも、歌に愛された本物のエンターテイナー、それこそがホイットニーなのだから。
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